メンテナンスにいらしているダンサーMさん。
いつもは、右の腰に違和感を感じることが多いのですが、今回は、左の腹筋の奥が、どうしても伸びなくて、カンブレの時も、左足を意識して押さないとうまく反れないんですよね、というコンディションでした。
腹筋は四層構造になっています。
更にその奥には脚を高くあげる引き寄せる筋肉、大腰筋があります。
この筋肉は、脚と腰を結び付けているいわゆるインナーマッスル。この筋肉に左右差があると、バランスがとりにくくなることが少なくありません。
ただ治療に際して、大腰筋だけ診てしまうと、とても難しい面があります。
何しろ、腰椎の前面、お腹側にある筋肉だけに、体表からアプローチするには遠すぎるからです。
脚を深く折ってお腹側からアプローチするという手もありますが、大腰筋だけ診てしまうと、どうしても足りないところが出てしまうのです。
大腰筋が伸びにくいと感じている状態では、当然、反対の背中側にも影響がある訳です。
バレエのポジションに立つことは、脚だけ、腹筋だけで立つわけではないからです。
腰骨(後ろ側)のアライメントに大きな左右差があった
よく診るとやはり、同じ側の腰のテンションがいつもより高くなっている。
そこにアプローチすること、更に骨盤周囲の筋膜のテンションを緩めること、これが重要なのです。
一般的な接骨院だと、腰に電気をかけて、というスタイルが少なくありませんが、強めの刺激は逆に筋肉を固まらせることになる場合も考えられます。
バレエ鍼灸では、ダンサー特有の筋肉や靭帯の柔らかさを考慮して、お灸と鍼のアプローチで腰の深いところへもアプローチしていきます。
もちろんそれは、クラシックバレエのカラダの使い方を解剖学的に解析した上でのアプローチなので、施術の終わりには、左右の脚は、耳の横の位置まで同じように伸びる状態になっていました。
カラダの感覚に優れているダンサーによくあるのは、違和感がある場所、その周囲に集中しすぎて、その部分をなんとかしようとあれこれ動かしてしまうこと、なのですが、違和感や痛みがあるのは、その部分が原因なのではなく、他の箇所のバランスが崩れた結果今の箇所に出ているということが少なくありません。
左の腹筋に出ていた違和感は、頭部の左へのズレや腰の過緊張など、左右のバランスがズレていることから生じていた訳です。
違和感がある場合、焦らないで、トータルで自分のカラダを見直してみてほしいです。そして自分でコンディショニングが難しい時は、バレエ鍼灸にお問い合わせください。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange