つま先をぐっと伸ばすと痛い…
アキレス腱障害と言っても実際のアキレス腱に痛みがある場合と、アキレス腱の周囲に痛みがのでている場合は異なる症状です。
・ふくらはぎの下であるアキレス腱に痛みがあるもの-アキレス腱痛
・アキレス腱の横、内側もしくは外側に痛みが出ているもの-アキレス腱周囲炎
ふくらはぎの下、かかとの上を走る強い腱がアキレス腱。腓腹筋とヒラメ筋があわさった靭帯で一番強い腱。これがあるから、何回ジャンプしても大丈夫なんです。
それより、アキレス腱の左右が痛くなることが多いのです。これはアキレス腱周囲炎と言います。
この時に痛みが出ているのは、外側だと腓骨筋腱、内側だと後脛骨筋腱です。
ダンサーは踊らない一般の人よりアキレス腱は強く、長さも長くなっていることがほとんど。これは、長年プリエをし続けてきているから。
特にかかとのすぐ上あたりはコラーゲン線維がほとんどなので、余程強い力が外からかからない限り、簡単には切れません。(ジャンパータイプの男性に見られることがあります)
では何故、真ん中よりも外側、若しくは内側を痛めるケースが多いのか、ですが、これがバレエ特有のテクニックに関係があります。
他のどのダンスよりもバレエではつま先を伸ばすことが求められます。
床を滑らすように動かすタンジュ、かかとや膝を抱えるようにするク・ドゥ・ピエからパッセも、アラベクスの後ろでもつま先は常に伸ばしていなくてはなりません。
こんな状態、日常にはありませんよね。だからこそ、習得するのが難しいのです。
このバレエ的につま先を伸ばす過程がきちんとできると甲は育っていくのですが、これができでいるダンサーは実に少ないのが日本の現状。
(焦って甲だけ出そうとすると逆に足裏が育たなくなることも少なくありません)
更にポワントの問題もあります。おおよそ、10歳くらいから、早いと7.8歳でポワントをはき始めるのが日本の現状。足裏の訓練が完成される前にはき始めることが、後々、カンパニーやジュニアバレエ団に入った後、アキレス腱の周囲に痛みを抱えることにつながってしまうのです。
ダンサーですから、常にレッスンがあり、リハーサルがあります。その過程で、アキレス腱周囲が痛くなることもあります。
・トゥシューズでもつま先を伸ばそうと意識しすぎた
・ジャンプでちょっと着地がずれた
・パドゥドゥのプロムナードでタイミングがズレてアキレス腱に負荷がかかった
などのケースは、早期のケアと治療で治りも早く、1.2回で戻れます。
けれど、いつまでも痛みが取れない、取れても又すぐぶり返す場合は、炎症が慢性化している可能が考えられます。この段階になると、一般的なマッサージや施術で、脚の筋肉をほぐしても対応できなくなっています。
ただ、痛みがあっても、カラダのトータルコーディネートで踊り続けられてしまうのがダンサー。炎症がくすぶっているのに、つま先を伸ばしたりポワントワークをすれば、大元の傷が治る暇はありませんよね。
これはお湯を足しているバスタブの栓を抜いている状況に似ています。
炎症がくすぶり続けているケースは、自宅でのケアを加えることも必要になります。更に、リハーサル、レッスンの状況を見ながら炎症が続続かないように治療を加えます。
外側なら、腓骨筋腱、内側なら後脛骨筋腱の炎症を取り除くこと
他に、アキレス腱周囲に痛みを抱える人に共通な腓腹筋の硬さをゆるめることも重要なポイント。
いずれにせよ、炎症が治まったところで、足指と足裏のトレーニングも必須。踊ってきたキャリアに比例して足裏の修正も早いことがほとんど。一番は、繰り返す痛みをごまかして踊り続けないことです。
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【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange