分かりにくいと言われる解剖学をあんじゅ独自の視点でお届けするのがこの解剖学コラムです。【動かす(踊る)ためにカラダはどんな特徴があるのか?】を軸に人のカラダの仕組みを一緒に見ていきましょう。
大腿骨の上部や大転子についてもっと書く予定だったのですが、大腿骨に関係ある「膝蓋骨」と大腿骨の関係について書くことにします。
大腿骨を深堀りする前に膝蓋骨について書く理由は、今年にはいって、膝痛のケースがすごく多いからです。
では、
膝関節を構成する一つ膝蓋骨について解説します。
膝関節は太ももとスネの骨(大腿骨・脛骨、腓骨)がつくる関節ですが、膝蓋骨も欠かせない要素。
膝痛の時、この膝のお皿に特徴的な状態が出てきます。
さて、膝蓋骨とはどんな骨か?
大腿骨の上に乗っかっている、薄っぺらい貝殻のような骨です。
これは、大腿骨のような長い骨(長骨)と違って、種子骨に分類されます。
分類は種子骨
え?種子骨、って、足裏にあるあの骨のことじゃないの?ですよね。
種子骨は足裏以外に手の親指の根元にもあります。
この膝蓋骨、大腿骨の前を走る大腿四頭筋の一つ、大腿直筋にはさまれています。
普段はほとんど意識に上ることもないこの膝蓋骨。脚をスムースに曲げ伸ばしできるように助けるのが役割です。
大腿四頭筋腱が大腿骨関節軟骨とじかに接するのを防ぐ役割があります。
イラストで見ると表と裏側ではちょっと様子が違いますね。表はややすべすべ、裏はちょっとでっぱりがある。
どの解剖図でもだいたい太ももの骨(大腿骨)のほぼ真ん中に描いてありますが、実際に立っている姿勢のレントゲンを見ると、膝蓋骨が内側寄り、外側寄りになっている例もたくさんあります。
これはどういうことかというと、一般的に(解剖学的に)お膝のお皿は太ももの骨の真ん中にあるとされていても、立ちかたのクセで外や内に移動してしまうことがある、ということです。
とくに畳で正座などの姿勢をしてきた昭和世代(40代以降)にはこのズレがかなり多いです。
ほかに、O脚タイプで外重心で立っている人は、年代あまり関係なく膝蓋骨の位置から真ん中からズレていることが少なくありません。
・床についている足のアーチが外側に落ちて立っているのが外重心
・膝下の外側の骨(脛骨)を斜め後ろに押して立ってるのが後重心
外重心、かつ後ろ体重になっている両方のタイプも多いです。
この立ち方をしている人は(正面から診ると)膝蓋骨の位置がやや外よりや内よりになって立っているのです。
そしてこのタイプは、膝関節周りがガチガチに固まっている状態が診られます。
ラインを修正しようとして膝に触れてみると外にグッと押す力の強さに驚くことがあります。
でも本人は外に押して立っているとはほとんど気づけてない、、つまり外重心が日常化しているんです。
このタイプは同時に、ハムストリングスが硬くなっていているのも膝蓋骨周りが固まっているのも特徴です。
膝関節は太ももと膝下の骨の間なので、ここが固まると膝を柔らかく使うことがうまくいかなくなります。
そしてこれが膝痛の原因の一つになるのです。
踊るとき、膝が固まっていたらプリエがうまくはまりません。
スケートだと膝で踏ん張っていたらエッジを切り返すときに足がぶれて氷をうまくけれなくなります。
膝を外(や内)にしようとするのではなく、膝蓋骨を太ももの前の筋肉(大腿骨)と一緒に緩やかに引き上げられるようになると、膝はスッと伸びていく、本来はそう言う仕組みになっているのです。
他に、膝周りが硬いタイプとは逆に膝蓋骨がゆるゆるしてしまうタイプもいます。
こちらのタイプは膝の曲げ伸ばしの際に、ほんのわずかだけど膝のお皿が緩んで左右(内外)に動いてしまいます。
そのせいで太ももの前の筋肉を引っ張ったり、逆に固めたりして、これも膝痛の原因になります。
膝蓋骨は、太ももの筋肉がしっかり引き上がっていればゆるゆるしないのですが、このタイプは柔軟性も高い人が多く、プリエもはまりやすかったりするので、気づくのが遅かったりします。
膝が曲がる度に、太ももの筋肉の腱(大腿四頭筋腱)が関節(軟骨)に当たるようでは痛くて曲げられません。そうならないためにあるのが膝蓋骨。
膝周りは、ガチガチでもゆるゆるでもなく、膝蓋骨が太ももの筋肉と一緒にスッとあがったまま膝の曲げ伸ばしができていると、「膝が伸びない、膝を伸ばしたい」悩みも解消するし、膝痛も起きにくくなるのです。
大切なのは、膝周りを固めて動かないこと。これは踊りや滑りだけでなく、スポーツ全般について同じことなのです。
膝痛についてはこちらを見てください。