ダンサー、バレエ教師ならではな症状として変形性股関節症があります。
股関節の可動域が高く、柔軟に動かせるはずなのに何故?と思われるかもしれませんが、柔軟であるからこそなってしまう、とも言えます。
というのも、ダンサーさんの中には股関節のツキが浅いタイプが少なくなく、この臼蓋形成不全をもっていると、変形性股関節症になりやすい傾向があるからなんです。
典型的な例を挙げてみます。
・10代20代の時には、痛みも違和感も何もなかったけれど
・30代を過ぎ、40代になってきて、 バットマンやディヴェロペで引っかかるようになってきた
・又、リハーサルが続いて踊る量が増えるとだるかったり、違和感が出てきた
こういう症状が半年以上続くのであれば、一度画像診断を受けておくことをお勧めします。
カラダが柔軟なだからこそ、動けてしまうからこそ、マックスまで使ってしまう傾向にあるダンサーさん達。
元から関節が柔軟だからこそ、それまでの運動量が関節への負担になっているケースが少なくないからです。
骨は破壊と再生を繰り返していますが、軟骨は骨ほどには丈夫ではありません。関節の間にあってショックアブゾーバーになってくれていた軟骨も過度の刺激によってすり減ってしまいます。
又、股関節にかかる荷重から軟骨の下にある骨が硬くなっていきます。
進行すると、関節のすき間が減り、骨に濾胞や骨棘(トゲ)ができたりするため、痛みから動かしにくくなり、関節の可動域がぐっと減ってしまいます。
実際の状況は外からでは詳しくわからないので、画像を見る必要があります。
股関節は自分の体重を支えててくれる重要な関節。
そこに変調が起きると歩くのも困難になり、関節の置換手術を考えなくてはならなくなります。
股関節痛は、太ももの前にある大腿四頭筋の使いすぎによる腱の炎症であるケースがほとんとなので、この場合は、腱の炎症を取り除き、大腿部や骨盤周囲筋筋緊張を緩めることで治癒しますが、年齢が上がると気づかない内に、ハムストリングや内転筋が衰えてくることも見逃せない要因です。
又、女性は年齢と共に、体幹と腕のコーディネーションが弱くなってくるため、上半身のスクエアを保つためのトレーニングも必要になってきます。
小さな変調をほっておかないで、現状をきちんと知ること、そして適切な治療とトレーニングを続けることで、関節への負担を大きくせず、踊っていく、これがとても大切です。
股関節痛の治療については
体幹、上半身のトレーニングについては
でサポートしています。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、「バレエ鍼灸」と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、施術・ターンアウト改善、開脚改善などを展開。
著書:『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
フロアバレエクラス:新宿にて月1回開催中
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▶ Instagram:ballet.ange
本記事では、股関節痛、腰痛・ヘルニアの治療について、約20年バレエ・ダンス専門治療院の院長として治療をしてきた筆者が、原因と改善法を解剖学的に解説します。