コンテンポラリーやモダン、ジャスダンスのダンサーさん達の中には、柔軟性が十分にあってカラダのキレも良く、アップしないでも踊れてしまうタイプがいます。
このタイプのダンサーさんは、関節や筋肉自体は柔らかいのに、太もも前が奥までぎゅっと固まっていたり、お尻の筋肉がとても硬い傾向にあります。
Yさんもそういうタイプでした。来院した時は、急性腰痛が起きた直後で、動くのも大変という状況でした。
診てみると腸骨稜ラインと仙骨の筋膜に炎症があり、骨盤周囲の筋肉が筋性防御でガチガチ。
胸椎から腰椎まで一過性の側弯までできていました。まずは、炎症を抑え、固まっている筋肉をほぐすことが優先。その治療の間、何をどうしてもこうなってのかの経緯を聞きました。
すると。。。
『ヘルニアがあって、腰の筋肉をが固まりやすいので、伸ばそうとぶら下がって腰を引っ張るストレッチをよくやるのです』ということ。今回の急性腰痛発症前もそのストレッチを繰り返していたそうなのです。そして、一年に一度は同じような腰痛を発症していたそうです。
オーバーユースとも言える腰のストレッチ
でした。
分からないではないです。骨盤周囲の筋肉が固まってくるととても踊りにくくてスゴくもどかしい。けれど、固まっているものに力を入れ引っ張って伸ばそうとすると、筋肉は逆に縮まろうとします。これを反作用と言います。
力で引っ張る系のストレッチでは、大きな筋肉が主に引き伸ばされ、内側のある小さかったり細かったりする筋肉は、引きずられてしまい、本来の働きができなくなってしまいます。
治療の合い間、筋肉の特性と現状何が起きているかとお話しして、腰を引っ張って伸ばすストレッチは今後やらないようにお願いしました。
筋膜の炎症も一週間毎3回の施術でほとんど治りましたが、殿部と大腿部の深いコリはなかなか手強く、途中整体も加えながら、計5回の施術で、通常のレッスンと教えに復帰できるようになりました。
床からのアプロンを使って踊るバレエとは違い、モダンやコンテンポラリーは床とのコンタクトがとても多いダンス。
どうしても重心が下に落ちてしまいやすいこと、腰の位置は常に上に保っている方がよいのです。
柔軟な動きには対応できるカラダも、筋肉は自体はが固まっている状態で踊れば、筋肉を包む筋膜にズレだって起きてしまいます。筋膜は、季節の変わり目にも微妙に反応します。これから、蒸し暑い気温と冷えた室内との温度差がキツくなっていく時期。
他に、生理や年齢の影響もあります。
ダンサーのカラダは楽器と同じくらいデリケートなのです。自分のカラダの声を聞くだけでなく、筋肉の特性を知った上で、必要なのでストレッチなどを組み立てていくことが大切です。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange