レッスンで違和感を感じて以来付け根の痛みがあり脚を開くことが難しくなってしまったKさん。開脚やグランパデシャでも開けなくなってしまったとのこと。
付け根と言うと、股関節に症状があるケースもありますが、今回痛めたのは内転筋でした。
バレエ、ダンスでは、やはり脚を大きく開きたい訳ですよね。ただ、過度に開こうとしすぎると股関節周囲の筋肉に過度の負担がかかり、逆に伸びにくくなってしまいます。

そして、痛みが出た時でも、その内直るだろうと思って踊り続けてしまう方が少なくなりません。ケースによってそのまま治癒に向かう場合もありますが、筋膜に炎症が出てしまった場合は時間がかかってしまいます。
あまりにも治らないので整形外科で画像診断を受けて、医師から『骨には異常はないけれど、1ヶ月は踊るのを 休みなさい』と言われた段階で挫傷2週間経っていました。処方されたクリームで痛みが緩和されてきたけれど、やはりプリエをしてみるとつっぱりがある。
こう言うケースをどう診るか、一般の外科とバレエ治療院では少し方向性が違います。

バレエ治療院においても、3週間経っても痛みが全く緩和されず、歩いたり座ったり階段の昇り降りにも支障がきているケースは、バレエ治療院としても【レッスンの
一時中断】をお伝えします。できたキズも3週間ほど休めは炎症もおさまり痛みもなくなっていくのがカラダのおおよその仕組みだからです。
一方、日常生活で痛くならない、ただ、レッスンに復帰していいのか悩むケース、又軽いストレッチやプレバーをやってみると違和感やつっぱりが出るので、このまま続けていいのか迷うケース、ケガをした後は色々悩みますね。
バレエ治療院あんじゅでは、まず、挫傷した箇所に関わる一般的な動きを確かめることから始めます。
内転筋の働きは脚を内側に寄せることです。これは筋肉が収縮しておこる運動なので、逆に伸ばす状態でも痛みが出ないか、股関節を曲げた状態、伸ばした状態、膝を曲げた状態、伸ばした状態でも動きのチェックをします。
その後にバレエの動きにでも痛みが出るかも確認していきます。
Kさんの状態は、一般の動き、バレエの動きでも痛みは出ませんでした。となると何故、プリエをしてみたら痛みがでるのか?その要因を探すのです。
キズができた後、炎症が収まってきても痛みが出るのは周囲の筋肉に変調がでてしまうからです。炎症がある箇所をかばうように筋張ったり、こわばったりする反応が治りかけている内転筋を余計伸びにくくさせてしまうのはよくあることです。
手の甲をどこかに引っ掛けてキズができてしまった後、キズの周りが盛り上がってしまうのを見たことはありかませんか?あれと同じような反応が皮膚の下でも起きる訳です。
今回は痛めた箇所の周囲にあったスジばっている部分をしっかり治療しました。加えて、レッスンを休んでいる間使われていなかったターンアウトに関わる筋肉を動かしやすくなるよう調整。治療後はベッド上でバットマンがするっとあがるようになっていました。
これは=ターンアウトしやすくなっていること。床に立ってプリエをしても痛みはなくなっていました。
これで初回の治療は終わりましたが、ケースによって1、2週間後に治療をいれる必要がある場合もあります。これはケースバイケースなので、個々にお話をしています。
その後、痛みも出ず、無事レッスン、リハーサルに出られているとご連絡をいただきました。
同じ内転筋の症状でも、医師の診断が優先される場合もありましたが、バレエを踊っている視点からすると、バレエに戻るために何が必要かという別の方向がみえてきます。
内転筋の肉離れで痛みがとれない、レッスン、リハに戻れない、戻っても違和感が消えないと言う方はご相談ください。
投稿者プロフィール
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市川 淑宥子(ようこ)バレエ治療院あんじゅ院長
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一般社団法人日本バレエワークアウト協会理事
バレエ解剖学講師/バー・アスティエ講師
2008年にこれまでになかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をバレエ鍼灸と命名、バレエ治療院あんじゅを四ッ谷にオープン。以来、国内外のダンサーの治療に当たる。
2013年NPO法人バー・アスティエ協会の講師資格を取得、2014年以降バレエの解剖学運動学に基づいたトレーニングメニューやフロアバレエクラスをスタート。
2019年『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』を出版し、バレエ・ダンス・表現スポーツに欠かせない開脚エクササイズを紹介している。