ステージ前なのに、坐骨から大転子周りが痛くて、脚が伸ばせないと来院されたMさん。
背部を診てみると、脊柱にカーブが出ていて、脊柱起立筋群のバランスが崩れていることが分かりました。
両方の骨盤横も固くなっており、背骨と骨盤周囲の筋肉を緩め、更に痛みのある坐骨周囲からハムストリング、反対側の大腿四頭筋も緩めることで、バランスが戻り、立つ姿勢や、脚を動かすのも楽になりました。
当初は、急性の坐骨神経痛の治療を行ったのですが、その後又2週間して治療が必要になったと連絡があったのです。
次に診た時には、背骨のカーブはほとんどない状態でした。けれど、坐骨から大転子周囲には筋緊張が診られます。
何か思い当たる動きや不意のアクシデントはなかったかと聞いていって、Mさんが思い出したのは、『そうだ、右下の歯のブリッジがとれてしまって、歯の高さがあってなかった』と言うこと。
ブリッジが外れたのは、前回治療に北2週間前、そして歯の治療をしたのが今回の来院の数日前、だったのです。
これで、前回と今回の症状の原因が分かりました。
脊柱起立筋群のバランスを崩させ、結果、坐骨から大転子周りの骨盤周囲に筋緊張をもたらしていたのは
歯の高さのズレ
でした。
歯並びや歯の高さが揃っていることと、カラダのバランスはとても密接に関係しています。
以前にも症例ケースで挙げましたが、顎関節症の影響で仙腸関節にズレが生じることもあるのです。
一つ前のコラムで、頭部のズレがバランスを崩すと紹介しましたが、大人の場合、ある程度は筋力で左右差などはカバーすることができます。
ただ、これはあくまで日常生活をおくる分には動ける、というレベルなのです。バレエ、ダンス、表現スポーツのようにバランスをコントロールしなければならない場合だと、頭部のズレや、歯の高さの違いなど、ちょっとした重さの違いが、首や肩、腰への負担として現れるのです。
歯科医によると、一つ歯が抜けたのをほっておくと支えがなくなるため頭がズレ、背骨にズレがでるため歯の治療が必要だといいます。歯の高さもこれを同じような影響が考えられます。
坐骨神経痛を治療してもなかなか治らないケースでは、歯の健康について思い返してみることも必要です。
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【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange