変形性股関節症の診断を受けて、ダンスを続ける人は少なからずいます。
Tさんもその一人。以前から左右差が気になっていただけでなく、痛みが出てきたため画像を撮って分かったのだそうです。
小さい頃から知っていたという方もいますし、痛みが出て調べてみたら、関節が浅いタイプだったと知るという方もいます。
・大腿骨がはまっている股関節に変性・変形がおきて、痛みが発生する
・症状が進むと歩行にも障害が出てくる
変形性股間節症は、大まかにいうと、関節にある軟骨がすり減ってしまい、変形したり、水が溜まったり、関節をおおっている膜に炎症がおき、痛みが出てくる症状です。
骨がぶつかりやすくなり歩くたびに痛みがでてくると症状が進んでいると言われますが、最初のうちは気が付かない人も少なくないのです。
特に、股間節の可動域が高いタイプに、関節が浅い人が少なくなく、痛みに耐えられずキャリアの途中で踊りを止める人もいるのです。
あんじゅのクライアントさんにはオペをした後、リハビリをしっかりしてダンスや指導に戻った方もいます。Tさんには、そういう方の例などもお話ししました。
踊りが好きだから、指導は止められないからと言って踊りを続けるのは、このケースでは危険です。
股関節は腰から下のカラダのパーツを支える大きくて重要な関節だからです。
関節症末期の方の歩き方を診たことがあるのですが、カラダを支えられなくなると普通に歩くのも難しくなるのです。
股関節もですが、膝の関節も関節症の診断を受けたら、定期的に経過観察をすることが大切です。
画像で診ないと関節軟骨の状態は分からないからです。
では、変形性股関節症について、バレエ治療院としてはどう対応するかですが、定期的に治療をして関節周囲に出る炎症を取り除き、バランスの崩れからくる筋肉の左右差や硬くなった深層筋のコリをほぐすことが重要なのです。
整形外科では診断はしても痛み止めと軽いリハビリだけ、という施術が少なくないので、それだけではダンスを続けるのは難しいからです。
関節破壊が進んで、歩くのにも支障があるのであれば、オペになりますが、そうならないように、治療と筋トレを組合させていけば、ダンスを続けることが全く無理ではありません。
股関節節症では、どうしても太もも前に負担がかかりやすいので、衰えやすい骨盤周りの筋肉とお腹のなかにある深層の腹筋を鍛えるトレーニングを伝え、毎回動きをチェックしました。
2年たったところで、再度画像を撮ったところ、医師が思っていた以上に関節の破壊は進んでおらず、早急のオペはまだ要らないね、ということになりました。
同様の治療が、すべての股関節症の方に当てはまるというものではありませんが、痛みの元になる炎症を抑え、硬くなりやすい筋肉をほぐしバランスを取り戻すことで、踊りを続けられている、というケースを今回ご紹介しました。
自分が股関節症なのかは、画像を撮らないと最終的には分かりません。左右差が長く気になっていて痛みが出るようになった方は、まず画像診断を受けてください。
そこから先、ダンスを続けたい方は、バレエ治療院あんじゅがサポートしています。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange