四回にわたって仙腸関節痛をご紹介しました。痛みの元は炎症で、ターンアウトの間違いやオーバーユースでおきやすいこと等をみてきました。
けれど、治療をしても繰り返す仙腸関節痛がでてきます。
それも、生徒ではなく教師などに少なくないのです。生徒と違い、カラダの条件も良く、アライメントは補正しやすいはずなのに、また仙腸関節痛を起こす。
一体何が原因なのか?と治療していると分かってきたことがこれです。
顎関節症
との関わりです。
少し細かく診ていきます。
・股関節
・腰椎の椎間関節
仙腸関節痛みの原因は、仙腸関節にある炎症です。
そして、炎症がくすぶってしまうと他の筋肉に影響がでるようになります。
場合に寄っては、骨盤周囲の筋肉(殿筋や李状筋)が硬い時に、股関節の可動域が制限されている時に、その余波で仙腸関節が痛くなるケースもあります。
これは骨盤周囲のつながりから考えると納得しやすいですよね。
けれど、これとは全く違う要因で仙腸関節痛がぶり返し、しかも長引くケースがありました。
それが顎関節症です。
上あごと下あごの関節で、これも球関節の一つになります
顎関節は、腰部ではなく頭部の関節ですよね。では、何故この顎関節が関係あるのでしょうか?
顎関節は、上あごと下あごの関節ですが、上あごは頭蓋骨の一部です。うしろ頭には大きな穴があり、そこに背骨がはまっている構造。
一番上の背骨のことを第1頸椎=還椎と言い、二番目の頚椎(軸椎)と一緒に頭部を支えています。
つまり背骨の一番上には頭があって、仙骨(尾骨を含む)はその一番下なのです。
背骨のカーブは、頭部から始まるカラダの負荷を吸収するために緩やかなS字カーブを描いています。
ダンサーや教師の中にはカーブがすくないストレートになっている方が少なくありません。けれど、インナーマッスルなど訓練された筋肉があるので、かかる負荷は調和がとれるようになっている訳です。
けれど、常に頭部がずれるような負荷がかかったとしたら?
特にポワントのボックスのように小さな面積でカラダを支えるクラシックバレエでは、1cmの重心のずれは、アライメントに大きく影響します。
さまざまなトレーニングでインナーマッスルを常に鍛えているのに、一定の時期になると腰を中心に不調がでる方には、受け口や顎関節症を抱えている方がいました。
こうなると、仙腸関節痛の治療で仙骨周囲と腰部大腿部だけを診て治療していても治療効果は持続しません。
顎関節症を治すことで仙腸関節痛が収まる
歯並びそのものの治療は、歯科治療の範囲になりますが、噛み締めや顎関節症を緩めることはバレエ鍼灸の適応になります。
今の10代は、受け口や歯の並びを矯正することが一般的になっていますが、20年~40年前では、歯科矯正はさほど一般的ではありませんでした。クライアントさんの中には受け口を気にしているダンサーさんもいました。彼女は20代でしたが矯正はしていませんでした。
矯正技術や歯科技術は時代とともに大きく変化していますが、自分が子供のころに受けた古い歯科技術の後遺症に悩んでいる40代以上の方は少なくありません。その方々の多くの方は顎関節症を併発しています。
繰り返す仙腸関節痛に悩んでいるダンサーさん、教師の方々は、顎関節の状態を振り返って見てください。
>>>電話:090-9362-0080
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange