10年前、5年前よりも多くの情報が公開されていて、ダンサーだけでなく、小学生でも手軽にしりたいことを調べることができる状況になっていますが、やはり、バレエ的なつま先の伸ばし方をしっかりつかめている生徒は少ないのだ、と改めて感じています。
レッスンだけでなく、歩く時も痛かったんですが、今終わったら痛くないです
Kさん
両方のアキレス腱が痛いと来院したKさん。
一番痛みが出るのはアキレス腱直上だそう。
確認のために、ベッドの上で自分でつま先を伸ばしてもらいました。
案の定、写真上のような伸ばし方になっていました。(写真は参考写真です)
ここで、診なくてはいけないのが、距骨のところで引っかかりがあるのかないのか?です。(距骨突起で痛みがでるケース)
なので、私が補正をしながら伸ばしてみると、この写真のようにしっかり伸びていきます。
しかも、私が補正して伸ばす時はアキレス腱には痛みが出ませんでした。
彼女は、このところ痛みマックスだったそう。なのに、アキレス腱直上に明らかにあるはずの炎症症状はほとんどありません。
この状況は解剖学的に分析するとこうなります。
・距骨突起によるアキレス腱痛…なし
・ジャンプの着地やフェッテの練習などからくる衝撃によるアキレス腱の炎症…なし
炎症をそのままにしておいても、3週間ほどあれば収まっていきますが、その間レッスンやリハーサルをすれば、炎症のある部分に更に負担がかかり、炎症が広がるだけでなく、痛みからかばう動きが始まり、足首より上のふくらはぎや膝、時には股関節、腰にも痛みが出る可能性があるからです。
炎症がさほどではない時は、お灸だけで済むこともあります。それは、実際に状態を診てからでないと判断できません。
炎症がなく、でも痛みが出るのであれば、今度は何故痛みになるのかの原因を見つけることが必要になります。
そのためにいくつかの動きを診ていきます。
その結果分かったのはある問題でした。
歩く時にかかとの音がする かかと重心
です。
玄関から入ってきてほんのわずかの歩きでも多くの人がかかと重心(後ろ体重)になっている傾向があります。
歩き方も軽くなく、ペタペタ歩いている、、、バレエを踊っているのにですよ⁉︎そこで、年齢的に必要があれば歩き方を修正することから始める場合があります。
Kさんも歩き方を修正すると、歩いても響いていた痛みはなくなりました。
バレエを踊る人は、生徒のみならず、ダンサーですら膝を曲げることは悪、とでも思っているのかしら?と感じざるえないくらい、脚を伸ばして歩こうとしています。
それが固めて伸ばしていることになっていても気づいていない。
膝関節は、元々曲がるようにできている関節です。
それは人の動きとして自然なことであり、バレエでもプリエでは、ちゃんと膝を折りたたんでつかいます。
バレエで膝をしっかり折りたたむことは、次のパのエネルギーであり、そこから全てのパが生まれるのですよね。
だからこそ、自然に軽く膝の曲げ伸ばしができるようになることこそ、大切なはずです。
けれど、多くの人は、膝が伸びていることだけを重視しているようにみえます。
膝を伸ばしたいなら、トルソーを引き上げていればいいのに、それを忘れて落ちた上体で伸ばそうとする。
その結果、体重は後ろに傾き、歩き時にはペタペタ歩きになっている、これでは本末転倒ですよね。
歩き方が変わってくると腰も少し上がってきます。
けれど、実際に足の踏み替えなどを見せてもらうと、腰は全く上がらず、足だけでやっている。 うーーーーんん、いったいどうなっているんだろう???? そういうケースが多発しているのです。
ある意味、カラダと動きを関連づけていく作業、いわゆるコーディネーションが目覚めていない、もしくはおやすみしている人が本当に多いです。
これが長いケガによるブランクがある場合なら多少理解はできるのですが、ずっと踊り続けている人に少なくない、しかも、こと、10代にとても多いのです。
大人になっても踊り続けている人、また再開した人に色々悩みがあってうまく踊れない理由は、カラダの変化だけでなく、このようなつなぎの悪さにもあるのではないか、と思います。
とにかく、骨盤を立てて座ることができない、これは、ジュニアだけでなく、大人のダンサーや教師にもいたりします。
もちろん、ダンサーや先生であれば、踊る時には違うのでしょうが、何気ない座りの時に腰が落ちているままを許している人が少なくありません。
ケガをするきっかけはいろんなところに潜んでいますが、もしかすると、リハーサルや舞台上のアクシデントやパートナリングだけでなく、普段の姿勢の緩みが知らず知らずつもりつもってケガを招いているのは少なくないのです。
骨盤を立てて座れないと、フロアバレエのエクササイズは、やってもリハビリやトレーンニングにはつながりません。
そのため、最近は、シンプルな筋トレやスストレッチをして、カラダの感覚を目覚めさせ、動きをカラダをつなげられるような工夫をしてます。
特に膝を外に向けようとする、立つときは押して後ろに引いても伸ばそうとする、足首がグラグラしても甲をだしてドゥミをするなど、見た目だけにとらわれていることが多い。
それが証拠に修正する時に多くの人が、目で確認しようとするんです。
カラダには重心やラインをコントロールするセンサーがいっぱいあって、バレエやダンスはそれをフルにつかう必要があるのに、自分の目で見ないとラインが確認できないのであれば、舞台にでることはできませんよね。舞台には鏡がないのですから。
そういう意味でも、多くの人がカラダのセンサーを使いきれていない、と感じます。
アキレス腱痛の完治は、痛みや炎症を抑える治療だけでなく、痛みが出ないラインに立ってつま先がコントロールできるラインの修正もとても重要だと考えています。
Kさんの場合は、炎症が少なく、体重も軽い10代だったので、トレーニングメインで行いました。
その結果が上の感想です。
アキレス腱の痛みは、我慢していても簡単に治らないケースが少なくありません。それは筋肉と違う腱のは特性にあります。
いつまでも続く痛みが更に別の箇所に広がると確実に踊りの質にも影響がでてきます。 早めの対処を心がけましょう。
アキレス腱痛の治療についてはこちらへ(痛みの度合いで、治療かトレーニングか分からない場合は、その旨を書いてください)
>>>電話:090-9362-0080
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange