くるぶし周りが痛くてポワントで踊れないと言って来院したMさん。その捻挫は3年前だそうです。
『これまで何軒かの接骨院に行ったけれど、甲がでにくいのは捻挫が原因だと言われてきたんです。』とおっしゃったのはお母さま。
はい、確かに数年前の捻挫の処置がよくなく、その後足部を痛め踊りを止める決意をした大カンパニーを辞める決意をしたダンサーさんを治療したことがあるので、そういう可能性もあるでしょう。
けれど、診てみると痛めたという足首部分の皮下や皮膚に大きな差があるようには感じられません。
3年前に痛めて、それが治らず未だに靱帯がゆるいというなら、もっと足首はふらふらしていてもおかしくはないのですが、そうでもない。
けれど、痛みがでる方のつま先を伸ばしてもらうと痛みがでる。
そこで、よく診ていると、問題なのはその伸ばし方でした。
ジュニアに多い(実はジュニアだけでなくシニアにも多いのですが)、足趾に力を込めて丸めて伸ばす伸ばし方をしている。
そのため甲がでにくくなっているのですが、たとえ、そういうケースだとしても、私が補正してつま先を伸ばしていくとほとんど痛みを伴わずつま先が伸び、甲がでていきます。
実際のところ、つま先を伸ばそうとするとアキレス腱やくるぶしが痛いと言う場合、伸ばし方に原因があることが多く、その場合、炎症があっても骨に問題があることはまれです。
ただ、今回は違っていました。どう違っているかと言うと、補正しながら正しくつま先を伸ばさせていこうとしても、踵周囲でロックがかかり、それより先に伸びる余地がとても少なかったのです。
彼女のつま先を解剖学的視点から診て、本来伸びる方向にアシストしてもどうしても引っかかりがあって伸びにくかった、その原因は
距骨の突起
でした。
こちらの記事でも書いていますが(三角骨障害)ジュニアからずっと踊っていてポワントに移行した時にきちんと立てないと言う場合、距骨の突起が底屈(ポワントにすること)を阻害している可能性もあります。
この距骨突起は誰にでもあるのですが、突起の形によって、バレエでいうつま先をのばしてポワントで立つための動きに制限がかかるのです。
距骨に特徴がある生徒の中には、痛みがでずそのままずっと踊ってしまう子が少なくなく、その結果、数年後に三角骨ができる、そしてできた三角骨が骨折したと言う例は山のようにあり、あんじゅでも何例も治療とトレーニングをおこなっています。
残念なことに一般の医療施設ではバレエやダンスの症例を数多く診ている訳ではないので、くるぶしの痛みを数年前の捻挫が原因と診断してしまうこともあります。
今回のケースではまず、痛みがでている箇所(実際は前距腓靱帯でななく)後脛骨筋腱とアキレス腱直上に施灸をし、合わせてふくらはぎ、スネの筋肉の緊張を緩める施術をおこないました。
そして大切なのは、距骨の突起に特徴があってもしっかり立てるところを探して立つ練習が大切。
そのポイントは上半身のスクエアを安定させることです。
こちらは、トレーニングメニュー【ターンアウトアップ】でおこないます。
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【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange