『ジャンプで着地した後なんだがグキッとなってその後かかとの上がすごく痛い』
『プリエをするときにアキレス腱が突っ張りやすくなっていたんだけれど、最近はポイントにしても痛くなってきたからロキソニンテープ貼ってレッスンしてるんだけれど、、、』
バレエ・ダンスの現場でよくみられる足首の痛み、代表的なのがアキレス腱痛です。
どんな症状なのか、実際にかかった人の症状、アキレス腱が痛いということはどういうことなのか、みていきましょう。
【目次】
◇よくお問い合わせいただく症状とカルテに書かれている実際の声
よくあるお問い合せの一つがアキレス腱のトラブル。ダンサーに本当に多いです。
ビッグジャンプやプティソーテ、ジャンプはバレエ・ダンスに欠かせません。
又、近年多いコンテンポラリー系の振り付けには、多様な動きを見せようとこれまでにないステップを組んだりすることがあるのですが、それは=足首への大きな負担になることも多いのです。
◆カルテに書かれているや実際の声
『プリエをしたり、ポワンテにしたりするとアキレスが痛い。
ポワントを履いたら大丈夫なんだけど。。。がまんしてたんですが、切れそうな感じになっちゃってこわかったです。』
『アキレス腱が痛い。ジャンプの着地のときにブチッという音が聞こえた感じで、それ以来飛ぶたびに痛かったり気になったりしてたんです。』
『アキレス腱が痛い』という場合、注意しなければならない基本はやはり部位の特定です。
アキレス腱は人間の中で一番強くて太い腱で、かなりの巾があります。
解説
A
アキレス腱そのものは、腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)とヒラメ筋(その内側にある筋肉)の腱が重なって踵の骨に付く二重構造になっているためとても強いのです。
腱の真ん中に強い痛みがある場合は、かなりの衝撃を受けて腱に亀裂が入っている場合も考えられ、これがいわゆる真性のアキレス腱炎で、どちらかというとビッグジャンプをする男性ダンサーに多い症状です。
B
腱の外側と内側の窪んでいる部分、ここを触ると強い痛みを感じるケース。
これがアキレス腱周囲炎です。
アキレス腱そのものに炎症があるのではなく、アキレス腱の脇を通る後脛骨筋もしくは長腓骨筋のどちらかの炎症であるケースで、つま先の細かい動きが求められる女性ダンサーに多い症状です。
この二つに共通している状態、それは、アキレス腱以外にも、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)がオーバーユースで非常に硬くなっていること。
何故そうなるのか?解剖図でその構造を診てみるとわかりやすいです。
膝から下は、輪切りにすると三層構造になっています。
・膝下の骨の前側が第一層 …前脛骨筋など
・膝下の日本の骨の間にあるのが第二層 …後脛骨筋など深部足底筋
・膝下の骨の後ろ側にあるのが第三層 …腓腹筋・ヒラメ筋の下腿三頭筋
ふくらはぎの一番太いところでは、実に半分近くを後面にある下腿三頭筋が占めています。
この構造がポイントでもあるのです。
ふくらはぎの筋肉=腓腹筋とヒラメ筋が硬くなっていくと、その負担が別の筋肉に及んでいくんです。
その方向にはふたつパターンがあります。
上でも解説しましたが、
一つが真っ直ぐ踵の骨に付くアキレス腱そのもの これがAのパターン。
高さのあるジャンプの着地で、引き上げが足りない状態が続くとふくらはぎへの負担は増大し、アキレス腱に大きな負荷がかかっている状態。
そして、もう一つが、足の奥にある後脛骨筋、そして長腓骨筋に負担がかかる。これがBのパターンです。
硬くなったふくらはぎに圧迫され、奥にある指の筋肉は柔らかさを失ってしまうのです。
この筋肉は、ふくらはぎの筋肉の下を通り、足底に向かう途中で、アキレス腱の脇を通る、この構造から、両脇が痛くてもアキレス腱が痛いと感じる。
これがアキレス腱周囲炎です。
ポワンテにする時に大切な筋肉で、アキレス腱の内側を通るのが=後脛骨筋
エシャペをする時に大切な筋肉で、アキレス腱の外側を通るのが=長腓骨筋
◆治療でのポイント
ではセラピーではどういう治療をするか?ですが、アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎、両方とも治癒へのアプローチはほぼ同じになります。
基本は、
◎腱の炎症を取りのぞく
◎腓腹筋の深部に潜むコリをほぐしていく
◎骨盤から足部までのコーディネーションを調えていく
炎症の程度によりますが、アキレス腱そのものの断裂(部分断裂)ではない場合、リハーサル・レッスンをしながらでも2ヶ月ほどで回復していきます。
ただ、踊っている時には痛みは感じないのに、イスやものにぶつかった時に痛みを感じる、と言う場合は未だ炎症が残っているサイン。
表面上の痛みがなくなっただけでは、アキレス腱関連の痛みは解決しないのです。
その理由はこちら
1)腱の成分=コラーゲンであること。 筋肉より治癒に時間がかかります。
2)踊りの姿勢(ポジション)が同じままだとふくらはぎにかかる負担が変わらないため、ケガを治すことに加えて、アライメントの調整をしっかりすることがポイントなのです。
Cさま ジャズ・モダンダンスの舞台後に故障
『足がある~ちゃんと立っている感じが分かります。』
Yさま 舞台リハの合間に故障 PDDの舞台復帰
『もう舞台に間に合わないと思ってました。痛くなくて踊れるのがホントに嬉しいです。』
Aさま 以前から痛みがあったけれど、舞台直前に痛みがマックスになる
『他では湿布だけとか、休めとか言われたのが、舞台に出られると分かってホットしました。』
骨盤の下に足部がくる、という基本のアライメントをしっかりつたえてあげてください。
膝下の美しさはバレリーナの特徴。生徒達はきれいな膝を目指して一生懸命レッスンしています。
けれど、伸びた膝を意識するあまり、逆に膝を押しつけてしまうケースがとても増えています。
しっかりアンドゥオールできているか確認しようと、1番から5番のポジションを目で見て確認しようとすることもあります。それではすでにアライメントはずれてしまっています。
ぎゅうぎゅうに固めた膝周辺の筋肉は柔らかさを失い、結果的にアンドゥオールがしにくくなりますよね。
伸びた膝で1番~5番のポジションを保とうとするあまり、後ろ体重の姿勢になっているケースも少なくありません。
すると、知らず知らずにふくらはぎの筋肉に付加をかけていることになってしまいますよね。
骨盤の下に足部。基本のアライメントをしっかり伝えてあげてください!!
バレエのための解剖学、バレエアナトミーはバレエ教師・インストラクターのための講座です。
基本の解剖学に加えて、バレエの運動学、そして何故生徒達がそういう動きになるのか?が分かると生徒達の踊りの質が確実のアップしていきます。
そしてアキレス腱治療に効果的なのは
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange