バレエ・ダンス障害、今回はヘルニアによる腰痛です。二回に分けて紹介します。
『腰が痛いと思って念のため検査したら、ヘルニアが見つかったんです』
と来院されたKさん。舞台のリハーサルで随分腰に負担がかかっていたようです。
画像のコピーを見せてもらいましたが、確かに脊柱の隙間は狭いのですが、椎間板の突出した部分が神経を圧迫しているようには見えません。
ヘルニアがあると診断されたL5・S1周辺の圧迫テストでも、下肢の痺れが増すような症状は出てきません。
けれど、腰から下、特に大腿部裏には痺れや痛みがあると言っています。
ヘルニアがありますね。。。と診断された時、大切なポイントがあります。
・ヘルニアになっている場所
例)4番目と5番目の腰椎の間/5番目と仙
骨の間 等
・どの程度神経を圧迫しているのか?
脊椎の神経が出てくる箇所で圧迫が起きているのが真性のヘルニア。圧迫されている度合いによって症状に差が出ます。
できれば、◯%位の圧迫があるか、具体的な数字が確認できれば、ヘルニアの程度を推測することができます。隙間が狭くなっていても外にはみ出た椎間板が神経圧迫を起こしていないケースもあります。
ですから、どの程度圧迫があるのかを確認することが大切なのです。
厚生労働省が出している『ヘルニアガイドライン』でも、オペが必要になるほどの症状は全体の 20%以下と書かれています。
Kさんの場合、腰椎周辺への圧迫テストよりも、大腿後部への圧迫テストの方に反応がありました。こういうケースでは、ほとんどの場合が、末梢性の座骨神経痛であることが多い。
特に、カラダが柔らかく、床に寝た状態で脚を伸ばすと耳まで届くほどの柔軟性があるダンサーの場合は、坐骨神経が走る範囲だけを診ているとバレエ治療としては足りません。
神経の圧迫がある部位を特定し、そこの筋緊張を取り除くことが一番重要のポイント。
加えて、大切なのが
踊る際に負担がかかりやすい骨盤周囲筋を緩めターンアウトしやすいように整えていくことです。
彼女のケースでは、踊りを続けながらバレエ鍼灸を10回、途中、リハビリでターンアウトアップを2回受け、症状がなくなってレッスンやリハーサルをしても痺れや痛みが出なくなったところで治療は終了しました。
バレエ、ダンスでは後ろに深くそったり、後ろ脚を高くあげたりするため、腰を痛めるケースが多々あります。
『腰だけで反らないで』と言うよく聞く注意の意味は腰の筋肉だけで背中を反らす癖をつけるとゆくゆく、腰を痛める可能性が高く、やがて、ヘルニアになる危険性もあるから、です。
一番は、腰だけに負担がかからない使い方を身につけることですが、実際に腰が痛いときにはどう対処すればいいのでしょうか?
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange