『腰が痛い、おかしいと思って調べたらヘルニアがあったんです』
検査してから約3ヶ月後にあんじゅにいらしたのは20代のバレエの先生Nさん。画像を持ってきてくれました。
画像を見ると確かに少しヘルニア=椎間板の突出はあるようです。
・SLRテスト
・痛覚と触覚テスト
椎間板ヘルニアがあって神経を圧迫しているのであれば、脚を上げていくSLRテスト(ストレートレッグレイジング)をすると、痛みが出てきます。
Nさんの場合は、90度は軽く上がっていました。
同じくヘルニアによって神経が圧迫されている度合いが大きいと痛覚と触覚にも差や違和感が出てきます。
けれど、Nさんの場合は左右とも痛みや筆で刺激した時に差が出ていませんでした。
と言うことはこれも陰性。
これは、ヘルニアはあるけれど、坐骨神経の圧迫度合いは少ない状態になります。
他に診てみると、やはりでていました。
脊柱の側弯
です。
このケースによく診られる側湾が出ていました。脊柱起立筋群のバランスが崩れている時、側湾はよくでる症状なのです。
このようなヘルニアによる腰痛の治療については、まず、痛みやしびれを感じるといういう箇所を緩めることが重要ですが、先程診た側湾はしっかり治療する必要があります。
ホルモンの影響による側湾と違い、腰痛などで診られる側湾は一過性のことがほとんど。これをしっかり治療することで、バランスの崩れた脊柱起立筋群が機能していきます。
初回の治療でかなりの緩みがでて、楽になったところで、ヘルニア体操を勧めました。これは、バレエの稽古前によく行われる背中を反らせる筋トレ、ストレッチと似ているので、Nさんにも馴染みやすかったようです。
ただ、バレエのためのストレッチと違って、沢山反らせる必要はないのです。
突出した椎間板は、前屈することで背中の方に出てきやすくなります。逆に背中を反らせると後ろの隙間が狭くなるので、出にくくなる訳です。
これを自宅でやってもらって2週間後に再び治療を行いました。
2回目の治療前に様子を聞いてみると、かなり緩和されているとこのこと。背中に出ていた側湾もなくなっていました。このへんはさすがバレエの先生だけありますね。けれど、今度は立った状態での前屈で背中に痛みがでるそうです。これは肋骨の位置が落ちていることから起きる状況です。
2回目の治療に加えて、前屈の調整も行いました。
初回の治療がかなり効いている状態なので、2回目は腰椎から更に骨盤周囲、大腿部にも出ていた緊張も併せてほぐして行くと、最初におこなった前屈も軽くなってきました。
ヘルニアと聞くと、もう腰は戻らないのではないか、と心配になったり、怖くてカンブレやストレッチをこわごわやるようになることがあるのですが、怖がりすぎると筋肉は緊張するので、それほどひどくないのに痛みを感じる事になったりもします。
ここでもポイントは、骨でしっかり支えてすること。そうすると訓練の長いダンサーや先生たちは確実に踊りに戻っていけます。
神経根の圧迫がどれくらいかというのは治療の判断基準になりますが、ヘルニアだからと諦めないで、しっかり治療して踊りに戻っていきましょう。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長/日本バレエワークアウト協会理事/芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange