ジャンプの着地で足首やアキレス腱を痛めて、治療もしたのになかなか治らないのはどうしてなのだろう…
ジャンプ系のテクニックがあるバレエ・ダンスでは、着地でアキレス腱を痛めたり、捻挫になるケースは少なくありません。
大抵は、治療をして長くても一ヶ月くらいで治っていくのですが、なかにはこんなケースもあるのです。
・半年前にアキレス腱を痛めたのがまだ治らない
・捻挫だと思ったけれど、はれぼったい感じはあっても、捻挫の割に熱っぽい感じがない
・そういえば足首を捻った記憶はあるけれどそれ程痛みはなかったから気にしていなかった。けれど、いつの間にか足首に水が溜まるようになって、引いたり溜まったりを繰り返している
足首は地面の傾きに併せて上手い具合にバランスをとってくれる大切な場所なのですが、この部位が上手く働いてくれないと歩行にも影響が出てしまいます。
そしてはっきり捻った記憶がなくても、気づいたら水が溜まっているというケースもあります。
熱感のない捻挫、アキレス腱痛やなかなか治らない捻挫、その正体は滑液胞炎です。
この滑液胞炎は、足首意外にも膝、股関節にもできるケースがあります。バレエ・ダンスを踊るにはちょっとやっかいな存在になってしまう滑液胞炎について取りあげていきます。
【Contents】
滑液胞炎、あまり耳慣れない名前なので、捻挫やアキレス腱と違ってイメージしにくいですが、どんな症状がでるのかというと、程度の差はありますが、そろそろ治っていい頃なのに未だに治らない、という状態が一番多いと言えます。
例えば、
・足首を捻ったけれど大したことなかったと思っていた、、、のに、なかなか腫れが引かない…
・捻挫した後たまっていた水は引いたと思っていた、、、のに気がついたら又水が溜まってきて、引いたり溜まったりを繰り返す…
という声が一番多いxです。
早い段階で治療できていれば解消するのですが、そのうち治るだろうとそのままにしているケースも少なくありません。そのケースではこういう症状が出てくることも…
・つま先を伸ばして痛いだけじゃなく、歩く時の着地の衝撃でも痛くなってきて歩くのがツライ…
・腫れがドンドン膨らできて、でも朝になると引くこともある。ただ、夜になるとパンパンになることが増えた…
そして、特徴的なのが、
気にはしていなかったけれど、水が溜まっている割に熱感が少ない
という症状です。
捻挫やアキレス腱は筋膜や腱の炎症で、おおよそ3週間から1ヶ月もあれば治っていきます。けれど、一ヶ月を経ってもまだ水が溜まる、痛みが増してきた…
挫傷して比較的早い段階で治療を加えると、アキレス腱や捻挫のように一ヶ月ほどで治っていきますが、『あれ、なんかおかしい…』と気づくのに一ヶ月以上経ってしまう事が多い、というのがこの症状のやっかいな点でもあります。
では、滑液胞炎の名である、滑液胞とは何なのでしょうか?
疑問
では、この溜まっている水の正体とは何なのでしょうか?
答え
それは、カラダの中の流れている漿液というものです。
リンパ管を流れているリンパ液とほぼ同じものです。毛細血管の中で流れている水状態であれば問題ないのですが、それが溜まってしまうと固くなってパンパンになり、ピンポン玉のようになってしまった例もありました。
カラダの中を流れている水が、袋状になっている滑膜や腱鞘についた傷からちょっとずつ溜まって、気づいたら腫れぼったくなっていたという状態になるのです。
この滑膜、腱鞘には曲げ伸ばしの多い関節周りを守るためのショックアブゾーバーの役割があります。梱包された荷物に入っている「プチプチ」みたいなものです。プチプチや他のショックアブゾーバーも袋状になっていますよね。あれと同じ仕組みがカラダにあるのです。
その滑膜に傷が付いてしまってその傷がなかなか治らない場合、少しずつ水が溜まってしまうという現象が起きます。これが滑液胞炎の正体なのです。
この滑液胞炎の困るところ、それは
水が溜まってしまうと腫れがなかなか引かない
ということです。
そして、最初はプニプニしていた腫れがパンパンになったり硬くなってきたりすると関節が動かされる度に痛みがでてくる、ということです。
足首や膝は、踊りだけでなく普通の生活でも曲げ伸ばしの多い関節です。痛みが長引くと日常生活やレッスンに影響がでてしまいやすいのです。
そして、これがこの症状の分かりにくさなのですが
「アキレス腱炎症」や「捻挫」と思っている、そう診断されたのに、水が引かない痛みがでてくる、なかなか治らないため、何故治らないのかが分からないということ。
更に、長期になると歩く時にも支障がでてくるのが続くため、筋バランスへの影響もでてしまうことが起きます。水を抜けば楽になるだろうと思って、整形外科で水を抜いてもらっても又溜まるを繰り返すことが多く、悪循環を繰り返しやすいのです。
この滑膜は、足首だけでなく、カラダの関節のいろいろなところにあります。
腱鞘でも似たことが起きるので一番多いのが足首周りですが、例えば、「プリエをすると膝に圧迫感があって、気がついたら水が溜まっている」といった膝関節、深く股関節を折ると違和感があった、その原因が股関節下、大腿部前にできた滑液胞炎だった、というができた例も治療してきました。
では、水を抜いても又溜まってしまいやすいこの滑液胞炎、実は、しっかり治療することで現場復帰は可能なのです。
一般的な整形外科での治療は、水を抜くことが主流です。ただ、水を抜けば治まりますが、又溜まるを繰り返すことが多いため、整形でも「又溜まるから治るまで待つしかないね」と言われて来院されたケースもあります。
ポイントは、
溜まっている水を診るのではなく、溜まってしまう仕組みの大元を診る
ことです。
つまり、溜まってしまっている水(滑液・漿液)が痛みやつっぱりの原因であっても、実際に水が溜まる仕組みになる原因は、傷ついた滑膜や腱鞘にあるということです。
この部分をしっかり治療していくことがポイント。
これにはお灸の力がとても効果を発揮します。加えて、パルスを使用し筋ポンプ作用を活性化させることで溜まっている水を引かせるようにします。
水が溜まる大元の傷は、曲げ伸ばしの多い関節周りにあり常に動いているため傷の治りにどの位時間がかかるかは、ケースバイケースになっていきます。年齢や何時できた傷なのか、日頃の行動量なの様々な要因が絡むため、アキレス腱・足首捻挫よりも時間がかかりますが、しっかり治療することで日常生活だけでなくレッスンやリハーサルにも戻っていけます。
長母趾屈筋腱炎と診断されたクライアントさんの場合
確かに該当腱に炎症があって水も溜まっていましたが、外側にも膨らみがあり足首全体がはれぼったい状態で来院。
脚を引きずるように生活をしていたため、靴底の減りが左右で極端にちがってしまうなど、日常生活にも支障がきているケースでした。
E・Iさんの場合
足首の腱の炎症と診断されていたのですが、一年近く治ることがなく腫れが引いたり引かなかったりが続いたため、レッスンもリハーサルもままならず、筋肉にもアンバランスが出ていました。
いわゆる難治性で既往歴が長引いてしまったケースでした。
治療をしっかり繰り返したことで4ヶ月でフレックス・ポワントにも支障が出ずレッスンに出られるように回復しました。
この症状の特徴は、患部がカラダの下部にあることでどうしても重力が働き水が溜まってしまいやすい仕組みがあるため治癒に時間がかかってしまうことですが、しっかり治療することで踊りに復帰できます。
あんじゅでは、足首だけでなく膝関節・股関節の滑液胞炎の治療にも実績があります。なかなか治らない捻挫、水の溜まって曲げにくい膝や股関節で悩んでいる方はお問合せください。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange