膝が痛い…
踊りをしていて一度は膝を痛めたことがある人は沢山います。普段、生活していて膝をぶつけて痛い…こういう時の痛みとは違うバレエ・ダンスの膝痛。
今回は、久々に膝痛のおさらいです。以前取りあげた膝痛についてはこちらになります。
○膝痛シリーズ 1
今回は、膝痛をタイプに分けて紹介します。同じ膝痛でも、似ている様で少し違う状態になっているのです。
◆目次◆
お膝のお皿(膝蓋骨)の上や裏に痛みがある場合
太ももの骨とお膝のお皿の動きが悪くなってくることから始まります。膝の裏側の痛みが長く続く場合は半月板損傷の可能性も考えられるので注意が必要です。
膝のお皿(膝蓋骨)の上下内外に痛みがある
お皿の下が痛い場合…大腿膝蓋腱
お皿の上が痛い場合…大腿四頭筋の腱
内側に痛みがでる場合…内側膝蓋支帯、鵞足炎、内側側副靱帯
外側に痛みが続いている場合…外側膝蓋支帯、長頸靱帯炎、大腿二頭筋腱炎、外側側副靱帯
膝の裏側(くぼんでいるところ)に痛みがある
大腿二頭筋腱、腓腹筋の伸びが悪いと膝の裏がしっかり伸びなくなってきます。そのまま踊り続けた結果、腱が引っ張られて炎症を起こすケースもでてきます。
一口に膝が痛いといっても、膝のどこが痛いのかは同じではありません。お皿の下に痛みが出やすいオスグッドは、10代のジュニアがほとんどですが、それ以外の年代でもお皿の下が痛くなるケースもあります。オスグッドについて
又長く踊ってきた方の場合、半月板内部の損傷が出ていると痛みがでる場所がそれぞれ違っていることもあります。半月板 について
いずれの膝痛でも、痛みの場所だけでなく、どう言うステップ(パ)の時に痛みがでるのか?痛くなったきっかけのパはなんだったのかなどを知ることも大切です。
他に、痛みがある場所意外に分けられるタイプがあります。
それが膝のお皿の動きがゆるいタイプとほとんど動かない固まっているタイプです。
膝のお皿がゆるいタイプについては以前も取りあげていますが、今回は、その逆の固まっているタイプと合わせて紹介します。
太ももの筋肉(大腿四頭筋)の挟まれているお膝のお皿。これがゆるくて、動きやすいタイプがいます。このタイプは、筋肉や靱帯の質が柔らかいダンサータイプになります。筋肉や靱帯の柔軟性が高いと、ターンアウトしやすかったり、甲が出やすかったり、背中の柔軟性が高かったりしますが、お膝のお皿に関していうと、柔軟性があだになることがあります。
踊りでは膝の関節は、常に伸びたり折り畳んだりしているのですが、プリエする時に、この膝のお皿がきょろきょろ動きやすい傾向があるのです。しかもこのタイプ、筋肉の質も柔らかいので、お膝のお皿をぐっと上にあげておく働きが衰えてくると、プリエする度に違和感を感じるようになってきます。
筋肉がある程度しっかりしている10代20代にはなかったような違和感を感じるのが、30代前後、そして40代50代になってくると筋肉の質の柔らかさがあだとなって、プリエを安定させにくくなってくるのも、このタイプです。
と言っても、筋肉や靱帯のタイプは元からもっているものなので変えることが難しいし、本人も気づきにくいため、気がついた時には、膝以外の関節にも影響が及んでしまう場合もあります。
膝のお皿がゆるいかそうでないかは、お皿の上下を指で押さえて、左右に揺らしてみると分かります。上下だけでなく、左右にも動きやすいタイプは、膝のお皿を引き上げてプリエするように意識することが大切です。
お膝のお皿は通常、上下には動くものなのですが、これがほとんど動かないだけでなく、膝周りが固まってしまっているタイプ。このタイプの膝痛は、いろいろな場所に痛みが出やすいのが特徴です。
膝のお皿は適度な動きがないと逆に膝周りの筋肉を固めることで膝を守ろうとするのです。このタイプは、筋肉がつきやすい筋肉の強い人が多く、ジュニアだけでなく大人の方の多くがこちらのタイプに入ります。
又傾向として、ジャンピング開脚やキックの多いチアダンス、ジャンプの着地で大きな負荷がかかるフィギュアスケートジュニアにも膝周りが固まって伸ばしにくいケースが沢山診られます。
あと気をつけたいのが、10代のジュニア。膝を伸ばすことを膝を後ろに押すこと、と誤解して踊り続けてしまうと膝周りが固まって膝のお皿があがりにくくなっていまいます。
そうなるとますます膝が伸びているように見えない、なので、更に膝を後ろに押すを繰り返して…痛みが出た時には膝周りがガチガチ…という状態になったケースも診ています。
膝の関節は、いつも柔らかく曲げ伸ばしができてこそいろいろな動きに対応できるのに、膝の周りを固めてしまうのはその逆方向。そうならない訓練が大切です。
治療については、どちらの膝痛も炎症が出ている箇所をまず治療することが最優先です。注射で痛みが一時的に治まることはありますが、日常生活でも膝は曲げ伸ばしされるので動き出すと又痛くなるを繰り返します。
局所の炎症を取り除くために開発したのが、あんじゅのバレエ鍼灸。捻挫と同じように膝痛にも効果を発揮してくれます。
膝のお皿が硬いタイプは、炎症を取り除いても痛みが続く傾向があります。膝周りの筋肉までがちがちだと膝だけの局所を直しても足りないからです。一般的な接骨院や治療院の治療で長期に治らないのは、局所治療に特化していることが要因です。
膝痛は、長く痛みを抱えている人が少なくないのですが、半年も変わらない場合、膝以外の関節に影響が出てくるので注意しましょう。
膝のお皿がゆるいタイプは、炎症を取り除くことで直ぐ楽になるタイプが少なくありません。ただし、炎症がなくなっても痛みが続く場合は、他の部位に影響が出ている可能性を考える必要があります。
どちらのタイプのあんじゅでは、膝だけでなく、全身の状態を確認して、関連痛が出ているだろう部位にも治療を加えています。
1.局所に出ている炎症をしっかり取り除くこと
2.膝という局所に終わらず、関連の部位もしっかり診て治療を加えること
3.膝の動き(ターンアウト、又ターンインも)を確認すること
です。
膝の動きの確認は、ベッド上で術者である院長が徒手でおこないますが、その後床に立ってもらって、パラレル、ターンアウトでも確認します。
合わせて診ているのが、骨盤のプレースメント。痛みを長く抱えていると、どうしてもかばう姿勢から腰が立てづらくなってしまいます。骨盤が立っていることは、上半身下半身のバランスがとれていることも意味するのです。
必要に応じて、リハビリメニューにもなる開脚エクササイズをおこなってもらうこともあります。開脚は、やはりどのダンスでも踊る準備ができてることのインデックスになるからです。
バレエ・ダンスの膝痛の治療は
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange