昨日28日ラストにいらしたのはアメリカから帰国中のダンサーさんでした。
カンパニーで踊ってきて、一年前くらいから、カラダの感覚が違ってきたそうで、脚がどうしても思い通り上がらない、というので、診てみると、やはり骨盤のラインに歪みが出ていて、外に外に引っ張って開こうとしていたんですね。
ダンサーも、特に日本人は、なんというかアンドゥオールコンプレックスがあると思うのです。
もちろん、最初からカパッと開くタイプだったダンサーもいますが、全員が全員そうという訳ではありません。
幼い頃から開け開けと言われるし、自分でももっと開きたいと思って踊っているからです。
だから、意識は常に外へ外へと向かっていくことが多いんです。
でも、人間のカラダの構造だけじゃなく、力学的に考えても、左右に分かれているものを開くためには、内にしっかりと締まっているものが要るんですよね。
そう、ちょうつがいの感じ。
内側に集める力を忘れて外へばかり開こうとするのはなにも日本人だけじゃないんですが、やはり骨格上アンドゥオールに不利な日本人の多くは、どちらかというと外への意識ばかりが強くなりがちなんです。
それでもまだまだ20代の内は、瞬発力も耐久力もたっぷりあるので故障しなくても済むケースが少なくありません。
それだけ、踊る力があるからこそダンサーとして踊っていられるのですから。
でも、30代の声を聞くころから、そしてその年を過ぎていくと、カラダは変わってくるんですね。
これは鍛えていてもどうしても起きてくるDNAのプログラミング。海外では30代で自ら踊ることを卒業するダンサーも少なくありません。それは、瞬発力や耐久力の変化とも関係あるのです。
この年代になって大切なのは、適切なメンテナンスと外からの視点を加えること、です。
バレエ鍼灸の後、ラインの調整をしていくと、彼女の脚はびっくりするほど高く上がっていました。
『思っていたよりずっと中を意識するのですね。でもその方が突っ張りはありません』
そうなんですね。ダンサーとして長年訓練をしてきたからこそ、きちんと開くラインに戻れるとすんなりカラダは開いていくのです。
このようなケースをあんじゅでは多々診てきました。だからこそ伝えたいのは、これ。
『もっと内側を意識する方がずっと楽に開いていく』ということ。
他のコラムでも書きましたが、日本人の開くポイントは、どちらかというと内側にありなんです。
すっかり緩んで楽になった彼女、嬉しそうに『来年里帰りの時に又来ます』と帰っていきました。
ここが分かってくると、カラダの反応もグンと変わってくるんですよね。皆さんも、ぜひちょっと内側を意識して、すんなり開くポイントを探してみてほしいです。
今年もお疲れさまでした。
来年も、バランスのとれたバレエボディを目指していきましょう〜
投稿者プロフィール
-
市川淑宥子(ようこ)バレエ治療院あんじゅ院長
-
一般社団法人日本バレエワークアウト協会理事
バレエ解剖学講師/バー・アスティエ講師
2008年にこれまでになかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をバレエ鍼灸と命名、バレエ治療院あんじゅを四ッ谷にオープン。以来、国内外のダンサーの治療に当たる。
2013年NPO法人バー・アスティエ協会の講師資格を取得、2014年以降バレエの解剖学運動学に基づいたトレーニングメニューやフロアバレエクラスをスタート。
2019年『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』を出版し、バレエ・ダンス・表現スポーツに欠かせない開脚エクササイズを紹介している。