解剖学を含め、いろいろ研究されている先生から質問されたのが、中足骨。
『市川先生は、中足骨が大事と言ってましたが、5本ある中足骨の長さが揃っていないから、外側に体重が流れてしまうんですか?』と聞かれました。
あんじゅでも、ルルベに立つときに足の指ではなく、この中足骨が大事であると話しています。
ルルベは、そもそも、爪先立ちではありません
まだ筋力が弱く、カラダができていないジュニアだと、どうしても足指の力で立とうとしますが、ここから卒業できないと、キチンとしたルルベは完成されません。
で、キチンとしたルルベは、どこで支えているか、と言えば確かに【足底部は】(←ここ大事です‼︎)中足骨なのですが、だからと言ってこの骨だけでルルベが完成されるものでもありません。
バレエの先生方は、長年踊ってきているため、ご自分のカラダでできている部分をあえて意識する、ということは少なかったりします。
呼吸もその一つですよね。息を吸って吐くって、自然なことなので、敢えて複式とか脇に息を入れようとか意識しないと感じられなかったりする。
なので、ルルベの安定に中足骨の長さが関係しているのではないか、という説を研究者から聞き、自分でいろいろ試されていたようなのです。
最近、ちょっと気なるのがこういう傾向。
もちろん昔もありましたが、ダンサーのカラダの構造に興味を持ち研究する人が増えているようです。
治療という面では歓迎する方向だとは思いますが、実際に踊ったことのない方には、どちらかというとムーブメントを理論で組み立てようとする傾向がみられます。
私もかつて、この筋肉が硬いからだ、と言われぎゅーぎゅー指圧され逆にアザになったこともあります。
確かに脚が上がるためのバランスに崩れが生じているときに、骨盤から下のラインを整体することは、施術としてはありです。
では、腰から下のラインだけ施術したからと言って、床で立ちバー無しで、スゴンディベロペのムーブメントが修正される、ものではありません。
・床に立つ力
・ボディを支える体幹
・上に伸びるアライメント
ここまで診ないと本当の意味での踊るカラダの調整にはなりません。
これをルルベでいうと、仮に中足骨の長さが揃っていたら、強靭なルルベが完成するのか?というと、バレエの力学は、そんな簡単なことでは終わりません。
確かに、中足骨は、5本のうち第5趾の長さは短いことがほとんど。そして、第2趾、第3趾が長い人はかなりいます。なら、5本が揃っていなければ、ルルベは完成されないのでしょうか?
もし、キチンとしたルルベを完成させるのに中足骨の長さが揃っていることが条件だとしたら、下で紹介する動画の生徒さんはプロにはなれない、ということになりますわね。
でも、実際、中足骨の長さが全て揃っているダンサーの方が少ないのです。
バレエは、何年も何万時間もかけてタンジュを育てます。
タンジュからタンリエを通しカラダをしっかり支えてルルベに立つことを訓練して、成長してもなお毎日レッスンでプリエ、タンジュからレッスンを始めます。
それは、骨や筋肉だけの問題ではないからなんです。
カラダの隅々までバレエのムーブメントで必要な動きができるようにコントロールしていく、これはある意味、高度な脳トレに近い作業です。
何故なら、一般的な日常生活には、バレエのムーブメントは全く存在しないからです。だからこそ、子供の頃から始め、続けていくことが大切と言われるのです。
中には、脚の長さが違うから修正しましょうと足底板を処方され、逆にカラダのアライメントが崩れてしまったダンサーもいます。
施術者にはもう少し、ダンサーのカラダだけではなく、踊りそのものに興味を持ってもらいたいものだと思います。
一度も踊ったことがないのであれば、今なら大人でオープンに参加できる場が沢山あるのでトライしてみるのも1つの方法です。
ポジションで立ち、そこから片脚で支えて、軸がブレないようにパを刻んでいくことがどれほど難しいか、それを体験してみると、どこか特定の筋肉だけの問題ではないと気づけると思います。
そして、お教室の先生方は、ムーブメントはカラダの一部の筋肉だけの問題ではないことを思い出してほしいのです。
生徒たちの成長を望む気持ちは充分分かります。けれど、ご自分は脚だけだ踊っていないはずですよね。そこを感じてみてほしい。
あんじゅの解剖学では、何故、一部だけで考えてしまう間違いが起きるのか?
そういう部分も合わせて、先生達にお伝えしています。
ワガノワバレエアカデミーで、現在、将来有望とされる生徒さんの動画がアップされています。冒頭のルルベになっていく足指の長さは5本とも揃っているでしょうか?
最初の5秒くらいまでなので、気をつけてよお~く見てくださいね。