日経グッデイで、「コロナで体力低下?」という記事がアップされていました。筋肉体操を考え出した中野ジェームズ修一さんによると『体力とは、「筋力」「心肺持久力」「筋肉の柔軟性」の3つを合わせた総合力』だと解説しています。
この記事は一般的にお仕事をする人のを対象とした記事なのですが、内容的に同じことだと思っています。では
・持久力
・体幹力
・ジャンプ力
・バランス力
です。
何故これらが大切かを一つひとつ見ていき、トレーニングメニューも併せて紹介していきます。
プロのダンサーや教師も今、カラダを戻すのに大変な思いをしていますが、彼ら彼女らが比較的戻りやすいのは、元からカラダの鍛えきた基礎力があることに加えて、毎日の生活がダンスそのものだという点があります。
引退して生活が変わったり、女性だと出産などで踊る量が減ると彼らでもバランスが崩れてきます。基礎力があっても調整がうまくいかずに治療にくるのです。ですから、ジュニアや大人の方が、それと同じようと考えないことが一番大切です。
又、ケガは移籍などでブランクが長かった方は、注意をしてください。プロでも基礎力が落ちている例が少なくありません。
早く元に戻りたい、回って飛んで沢山踊りたいとレッスンを詰め込む気持ちは分からないではありませんが、大切なのは、レッスンに踊りに耐えうるカラダに整えておくこと、です。
そのために大切なのがこれ
持久力・スタミナ、体幹力、ジャンプ力
です。
まず持久力、これは心肺機能とも言えます。一つの作品や長いアンシェヌマンを踊りきる力です。マスクをしていると呼吸がしづらい、その状況で踊るには、無駄な力を使って踊らないことも必要。無駄な力を使って踊ることは、質の高いパフォーマンスを維持することにはならないし、回転やジャンプなどのテクニックも乱れてきます。
心肺機能は肺と心臓の働き、肺と心臓はカラダの真ん中=体幹にあります。姿勢が崩れたら呼吸もしづらくなり、心臓へのポンプ作用も低下します。しっかりした姿勢で動き続けるためには体幹力は必須。腹筋・背筋も表面だけでなく深層の筋肉をつくっておくことが肝心になります。これが足りないと頭がカラダの中心からずれやすくなり、バランスが安定しません。
体幹がしっかりしてくると脚だけで踊らなくて済むようになってくるのでダンスに必要なジャンプ力が付いてきます。ジャンプを脚だけで飛ぶと確かに下半身の筋トレになりますが、バレエ・ダンスを脚だけで踊ると、体重移動ができなくなりますよ。
グランジャンプもチアダンスの左右開脚でジャンプするのも、しっかりした体幹があってこそです。
そして欠かせないのがバランス力。足底やつま先だけを意識してバランスをとろうとすると、グラグラするので要注意です。バックルでバランスがとれるのも、脚があがるからではないのです。体幹がしっかり上に引き上がっているから背中で脚をキープできるのです。
バランスは感覚的なもので普段の生活ではそこまで必要ものではありません。そのために大切なのは、脚の力だけではありません。体幹を支える筋力がとても大事。腹筋・背筋も表面だけでなく深層の筋力が必要です。持久力も体幹力があってこそ。ジャンプ力をつけるために、脚力だけ鍛えてしまうと、それこそ重いジャンプになってしまいます。
片脚でバランス、ドゥミでキープというのは日常生活にありません。やっていなかった分を取り戻そうとするとほとんどふくらはぎの筋肉(腓腹筋)を使ってしまうので、直ぐ疲れてキープできなくなります。更に、筋肉痛の原因にもなる。
脚でバランスをとるのではなく、カラダ全体でのバランス力を取り戻すことが、併せてジャンプのキレをよみがえら競ることにもなるのです。
カラダの芯や全体が安定してくれば、バレエやダンスのクラスレッスンの土台は、カラダを作るためにあるのですから、バー・レッスンやアップのフロアレッスンが格段に踊りやすくなってきます。
前回とりあげた自粛期間の日常は、どんなにオンラインレッスンをしていたとしても持久力、スタミナ、体幹力、脚力を維持できる量と質が足りてませんでした。その状態でレッスンに復帰しても、踊るカラダの土台が足りていないのだからアンシェヌマンをしっかりこなせる状態にない訳です。
踊るカラダの土台が足りてない状態でレッスンやリハーサルをするとどうなるか?というと、全体の総合力で踊りこなそうとする反応が出てきます。
足りないところがあっても何とか使えるものをかき集めて対応しようとするのはすごいことなのですが、その時何が起こるか?というと、強いところが強く出過ぎて、弱いところに負担がかかってしまうのです。
こんなことがあったら注意信号
・アティチュード・ルルヴェでバランスをとるのに、腰に力が入る
・ドゥミが安定しないからぐっと力をいれて立つ
一見バランスがとれてるように見えて、アテールになった時に足底が安定しなかったりしませんか?
プティソーテやグランジャンプで飛びたいからと踏切に力がはいってしまって、その後の着地でドタンとすごい音が出たり、膝に力がはいってがくっとなってしまうとか…脚だけで踊ることはできなくはありませんが、筋力が落ちてしまった時にそれを続けていると、ケガへの道に近づいてしまいます。
だからこそ、踊るための土台を見直すことが欠かせないのです。
脚力ひとつとっても、タンルヴェソッテを自主連ですればいいと言うのでは恐らく足りない人が多いはずです。
さて、量と質ですが、踊るカラダの土台作りにはどちらが大切か?は
質・量どちらも大切
です。
腰を持ちあげる筋力や体幹をキープする維持力もいる、そのためにはある程度の運動量も必要になってくるので、一日、一週間と言う短期で考えるのでは足りません。質のいいトレーニングは必要ですが、今回の場合はある程度の量も必要になります。
土台を見直して踊るカラダをつくりなおすのは、最初はノロノロ運転のように感じるかもしれませんが、そこで焦らないことがポイント。
残念パターン・・・ジャンプ力のためにとスクワット100回をがんばる → 疲れてしたって次の日からやらなくなる
続けられるパターン・・・スクワットなら、まず20回を毎日続けられるようにする
↓
毎日二週間続けてみる
↓
20回が楽勝になったら30回、40回と増やす
20回のスクワットを維持しながら、他のトレーニングを足していく
少しずつ段階的に増やしていくことが質を量の両方をあげていくコツ
続けているうちに、いつもの回数が楽勝になってくるのが感じられてくるはず。その段階までくると、ジャンプの蹴り足が軽くなってきたり、カトルが打ちやすくなってきます。少しずつ持久力を増やせば、グランアレグロが長くなっても問題なくこなせていきます。いつまでやっても楽にならないのであれば、それは量と質が違っている可能性があるので、トレーニング内容を見直すことが大切ですよ。
現在、どのクラスでも、先生方は工夫してアンシェヌマンを組んでくれているはず。お稽古場によっては、マスクだと呼吸が大変だからとグランアレグロは無し、というところもあります。グランアレグロもやらなければ、いざ再開した時に踊りきる力が落ちてしまいます。
普通に歩く、飛ぶ、脚を動かすのとは全く違うバレエやダンスのムーブメントに戻るには、両輪が大切です。
レッスンでカラダづくりの内容がない場合は、そこは自分で補いましょう。
具体的メニューとしてどんなことをすればいいのか?ですが、もうメニューがある、やっているという方を除いて、何をやっていいのか分からず、ストレッチばかりというのは心配です。筋肉を伸ばすことを目的としたストレッチングはトレーニングにはならないことが多いからです。そういう方にオススメのメニューはこちらです。
【持久力】ジャンピングジャック/素振り/縄跳び
【体幹トレーニング】ドローイン/背筋・側筋
この動画で組まれているストレッチとトレーニングはとても参考になりますよ!
【ジャンプ力】スクワット/2番グランプリエ
【バランス力】フリーハンドのグランプリエ
プロのダンサーの写真とは比較になりませんが、参考写真はこちら
それでも踊る感覚がなかなか戻らないと言う場合も出てきます。
そう言うときは、感覚を目覚めさせるために、自分のカラダのメンテナスを行うこと、セルフケアでもかまいませんが、今なら餅は餅屋で、施術を受けるのがオススメです。
股関節や膝、足首の痛みが3週間以上変わらないのであれば、治療が優先、バレエ鍼灸でしっかり患部を治していきましょう。
痛いのではないけれど、どうしても踊りづらい、ラインが戻らない、筋肉痛が半端ない、という場合は、こちら、寝ながらドローインの効果を味わえるバレエ整体で踊るカラダのラインを整えていきましょう。
【著者プロフィール】
市川淑宥子(ようこ)
バレエ治療院あんじゅ院長
日本バレエワークアウト協会理事
芸術家のくすり箱プロフェッショナル会員
鍼灸師/フロアバレエ・バー・アスティエ講師/チェアバレエエクササイズ講師
2008年、当時はなかったバレエ・ダンスのための鍼灸治療をスタートさせ、バレエ鍼灸と名付ける。現在も踊りを続ける治療家として、またフロアバレエクラスの講師として、施術・ターンアウト、開脚改善などを展開。
○著書 『骨盤が立てばあなたの開脚は変わる』
○フロアバレエクラスは新宿にて月一回開催
○インスタグラム ballet.ange